【第5回】
海から塩をつくってイギリスパンを焼いてみた!
こんにちは。
「リトルマーメイド・イギリスパン研究会」です(通称・パン研)。
今日もリトルマーメイドはいろいろな町でイギリスパンを焼いています。その味は、変わらずシンプル。だから、甘いも辛いも酸っぱいも、洋も和も、ぜんぶ受け止めてくれる。そのことを再確認したパン研の一年でした。
そんなリトルマーメイドのイギリスパンの持ち味は、言い換えるとつまり「塩味」なんですね。私たちもよく「あっさりとした塩味」と当たり前のように言ってきたのですが、ある時気がついたんです。
イギリスパンの「塩味」をマジメに掘り下げたことがなかったなあって。
小麦粉、水、酵母、塩...イギリスパンの主な原材料のなかでも「塩」の配合は約1%と微々たるもの。でも、私たちの関心は昨年の夏頃から急激に「塩」に吸い寄せられていきました。パン研の次なる"研究テーマ"を検討していたミーティングの席でリーダーがこう切り出しました。
「あのさあ...」
「自分たちで塩つくってみない?」
「でさあ、その塩を使ってイギリスパンを焼いてみない?」
塩がどれだけイギリスパンのおいしさを左右するか、試してみようというわけです。
そのとき、暦の上では大寒の頃。(できれば夏に言ってほしかったな...)の言葉をぐっと飲み込んで、海水から塩をつくってみることになりました。
まずは、海水を調達せねばなりません。それはどこにあるのか?海ですね。そこでメンバーのひとりが友人の海洋関係の研究者に主旨を説明してきれいな海水がとれるおすすめポイントを聞いてみました。
「室戸岬の沖合でいい海水がとれるよ。深層水だと理想的」
...理想的すぎます...。代わりに日帰りでも行けそうな関東近県のエリアを教えてもらって、いざ海水採集へ。
★★★ パン研女子、海水を汲んでくる!の巻 ★★★
さあ、はるばるやってきましたよ。透明度が高いのでわかりにくいのですが、かなり水深があります。
できるだけ沖合にバケツを投じて(よい子のみなさんはまねしないでね♡)、心持ち深〜く沈めて、海水を汲みます。
とりあえず6リットル分の海水を確保。
★★★ パン研女子、塩をつくってみる!の巻 ★★★
日付も場所も変わってリトルマーメイドの本社オフィス。さあ、塩づくりです。
塩づくりはまったく初めてなので、ネットなどで調べながら見よう見まねで挑戦してみます(つくり方が間違っていたらご容赦を...)。
まず、海水をクッキングペーパーで漉して不純物をとりのぞきます。念のため二度。
鍋でグツグツ。海水の量が1/10程度まで減ってきたら火をとめてもういちどフィルターで漉します。
この白い結晶はまだ塩じゃない(らしい...)。
塩じゃない、でもしょっぱい。
漉して残った透明な液体を、小さな鍋に移してさらに弱火で煮詰めると...
お、白濁してきましたよ。「塩」が結晶化したんですね。水分が飛びきらないうちに最後の濾過。
正真正銘の塩です。漉されて残った液体は"にがり"(豆乳に混ぜるとお豆腐ができますよ)。
塩をオフィスの窓際で天日干しすること数日...
できた!キラキラのパン研の塩!
ちゃんと塩ができているか不安ですが、食してみないと実験にならない(よい子のみなさんはマネしないでね♡)。とにかくこの塩を使ってイギリスパンを焼いてもらいましょう。
★★★ パン研女子、塩もパンも食べてみる!の巻 ★★★
今回テイスティングを行ったのは、写真の右から私たちがつくった「パン研の塩」、いまイギリスパンに使っている「現状の塩」、そして 「ヒミツの塩」の3種類。
「現状の塩」がとっても塩らしい見た目なのに対し、「パン研の塩」は上白糖のようでややダマになった感じ。「ヒミツの塩」はまるで砂のようにサラサラです。
それぞれの塩を使って焼き上がったパンがこちら。
一見、どれも同じイギリスパンに見えますね。
最初に「現状の塩」をペロッ。塩らしいお味です。「ヒミツの塩」は旨みがあってだし系のお味。さあ、いよいよ「パン研の塩」です(ドキドキ)。
えっ?えっ?えっ?
なんなんでしょう?このガツンとした塩辛さは。しょっぱいにも程があります。旨みといえば旨み?、雑味といえば雑味?、ワイルドっちゃあワイルド?、汗をかいたときの塩? とにかく塩辛い。
お次は30ccの水に1gの塩を溶かした"塩水"を。塩の味をいろんな角度から判断するためです。
「現状の塩」は、うん、塩味ですね。「ヒミツの塩」は海水を飲んでしまった感じ。そして「パン研の塩」ですが嫌な予感がします...
しょっっっっっっっっっっっっっっぱい!
ああ、やっぱり...。水に溶かしても塩辛さが際立っています。
さて、パン。"お肌"のチェックから。「パン研の塩」のイギリスパンは、やや粗い感じ。キメの細かさでは「ヒミツの塩」が一番でした。弾力まで変わるのね、不思議。
いよいよイギリスパンを食べてみます。「パン研の塩」のイギリスパンは、かなり塩味がきつそうな予感。みんながそう思っていました。
えっ?えっ?えっ?
予想は見事に裏切られました。なんと味がしない!「パン研の塩」を使って焼いたイギリスパンは見事にクラム(内相)から、いつものふくよかな小麦の風味も旨みも消えていたのです。
W ・ H ・ Y ?
あの激烈な「塩辛さ」はいったいどこに?
これもパンづくりの神秘でしょうか。原材料に占める割合が約1%の塩が、私たちがつくった塩に変わっただけで、風味も味わいも消え去ってしまった。
パンは生き物と申しますが、塩の力は私たちの想像をはるかに超えたものでした。正直に打ち明けますと、塩の大切さを知ったのは今回が初めてではありません。じつは昨年の9月に私たちは同じ経験をしていたのです。
どういうことかと申しますと...
★★★ パン研女子、事の真相を語る!の巻 ★★★
リトルマーメイドは、この一年間イギリスパンのおいしさをさらに磨くことに取り組んできました。さらなる理想をめざしての改良です。開発担当(パン職人)のみなさんの粉(小麦粉)へのこだわりは相当なものがありまして、彼らに粉を語らせると時間がいくらあっても足りません。パンのおいしさを決めるのは、やっぱり粉。次に水。そのふたつが重要なんですね。
私たちも当初は小麦粉のことばかり考えていました。パン研でイギリスパンの大試食会を行った際にこっそり混ぜておいた「イギリスパンの改良試作品」もそうです。でも何かが弱い。長い間愛され続けてきたイギリスパンだから、味が変わりすぎてもいけないし。
そこで、パン研が目をつけたのが「塩」だったのです。
リトルマーメイドのイギリスパンの魅力は塩味なのに、原材料の塩は手つかずでいいのかしら?塩を変えたらイギリスパンのおいしさに変化が出るかも。
イギリスパンがもっとおいしくなる塩が世界のどこかにあるはず!
そんな仮説(願望?)をもとに議論はスパーク!そこで北はフランスから南は沖縄まで諸条件でスクリーニングした8種類の塩をテストしてみることになりました。今回同様に、まずは塩の状態で、次に塩水でテイスティング。そして4種類の塩に絞り、同じ配合でイギリスパンを焼いてもらったのです。
結果は思ったとおりでした。塩を変えることでイギリスパンの風味も味わいも、そして(不思議なことに)食感までも変わったのです。ならば商品化しよう!となったのが、今から遡ること2016年秋のことでした。
カンのよいみなさんはもうおわかりですね。
今回の試食でも登場した「ヒミツの塩」こそが、もっともイギリスパンのおいしさを引き出してくれた塩だったのです。今回改めて食べてみてもやっぱりおいしい(内心、私たちがつくった塩の方がおいしかったら困っちゃうね?なんて身の程知らずな心配もしていたのですが、結果は真逆も真逆、塩づくりの大変さと塩の大切さを思い知らされました)。
というわけで、みなさま!
2017年4月1日、イギリスパンが「ヒミツの塩」を使ってさらにおいしく生まれ変わります!
はたしてヒミツの塩の正体は? その新しいおいしさとは?
ぜひ、お近くのリトルマーメイドでお試しになってくださいね。そしてそして、これからもリトルマーメイドのイギリスパンがあなたの暮らしの片隅でニコニコと微笑んでいますように...
以上、イギリスパン研究会でした。
明日もどうぞ、いい朝!を。
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- 【第1回】 イギリスパン、食べくらべ。
- 【第2回】 イギリスパン、食べくらべ(大試食会編)。
- 【第3回】 竹串とイギリスパンもってGO
- 【第4回】 イギリスパンと日本酒。
- 【第5回】 海から塩をつくってイギリスパンを焼いてみた!