イギリスパン研究会

【第4回】
イギリスパンと日本酒。

こんにちは。

「リトルマーメイド・イギリスパン研究会」です(通称・パン研)。

前回はお外で串焼きイギリスパンを楽しんでいたのにすっかり寒くなりました。

冬といえば、燗酒ですよね(え、わたしだけ?)

はい、今回はイギリスパンとお酒がテーマです。

それももっとも縁遠そうな日本酒とあわせてみました。 同じ発酵なかまですし「イギリスパン」と「日本酒」って二国を代表するような名前でもありますしね。

シンプルゆえにどんな食材ともぴったりなリトルマーメイドのイギリスパンの実力が今回も発揮されるのでしょうか?

ところで日本酒のアテといえば、小皿にちょこんと慎ましくのっているイメージじゃないですか。そうなると、山型のイギリスパンを小さく切って使うことになりますよね。じゃあ切ろう、とみんなでイギリスパンを囲んでいたそのとき、メンバーのひとりがささやきました。

「イギリスパンって部位で香りも食感も違うんじゃないかしら...

とっさにみんなの頭に浮かんだのは...。


なるほど!イギリスパンは生地をケースに入れてフタをしないで焼き上げるから、上の部分までぷくーと盛り上がって山型になるわけです。パン生地そのもののふくらむ力をいかしたパンなんですね。フタをして焼く四角い食パンとは膨張度も火通りのよさも違う。だとすると、火にもっとも近い底の部分、まんなかの部分、勢いよく伸びた山の部分、横のケースに触れる皮の部分、イギリスパンの食べる場所によって香りも食感もおいしさも違ってくるはず。

まずはそこを掘り下げて、それから日本酒の個性にあわせてイギリスパンのどの部位を使うか考えていこうという寸法です。

部位ごとの違いを確かめるにはどうするか?そうです、我々パン屋(の会社の人間)は何があってもまずはにおいを嗅ぎます。

てっぺんの部分、まんなか両端のミミ部分、底のカワ部分とイギリスパンの場所ごとに丹念に香りを探っていきます。

「うん、香りがぜんぜん違うね」

おつぎは、部位ごとに食べてみる。まずは生のままで。

「やっぱ、味もけっこう違うんですね...

「ほんとだ、部位によって香りも風味もはっきり違う!」

「!」「!」「!」

コロンブスが新大陸を見つけたときの船内もきっとこんな感じだったのではないでしょうか。意外な発見にメンバーの胸が高鳴ります。

パン研女子がつぶさに香りと食感を探っていった結果、リトルマーメイドのイギリスパンは下の図のような部位に分けられることが判明。パンをトリさんになぞらえて以下のように(パン研が勝手に)ネーミングしました。

そして、それぞれの部位別に、A)香り、B)生食、C)トースト食の3つをそれぞれチェック

①イギリスパンの"カシラ"部分

)香り → しょうゆ、こぶ、だし系の香りだ!

生食 → 香りほどには味はないなあ...

トースト食 → お、こぶ感がアップ!黒ビールの苦さか?

②イギリスパンの"ムネ"部分

香り → 上澄み的な香り、でも香ばしさもちゃんとあるね

生食 → あっさりとした塩味

トースト食 → あまり香りに変化はない模様(ほんのり香ばしい)

③イギリスパンの"セセリ"部分

香り → あまり香りは強くないなあ

生食 → 厚い皮の奥に香ばしさが潜んでるよ!噛めかむほど味わいが感じられるスルメ系

トースト食 → 香りもサクサク感も大幅アップ!これは大出世かも。同じカワでも①や⑤より香ばしい!

④イギリスパンの"モモ"部分

香り → さすが真ん中、いちばん風味を感じるなあ。炊きたてのごはんの香りだよね

生食 → うんうん、イギリスパンらしいあっさりとした塩味だ

トースト食 → 小麦粉の香りがアップ!でも、発酵臭も感じるかも...

⑤イギリスパンの"ボンジリ(皮付き)"部分

香り → なんだろう、きなこっぽい??

生食 → 水分が飛んでビスケットのような感じ

トースト食 → 良くも悪くもカリッカリですね

今回の発見は、意外と③のセセリ部分がいい仕事をしそうなこと。あと、全体的に「生だと塩味系」だったのが「トーストすると甘い系」に変化して、発酵時に生じる独特の香りも解放されることが再確認できました。それぞれ4枚切り、6枚切り、8枚切りと厚さを変えて部位の風味が変わるかどうかもチェック。私たちのイギリスパンを文字通り解剖していきます。

さて、イギリスパンの部位別の持ち味を把握したら、お次はお酒の番。

日本酒は、パン研メンバー(の家族)ゆかりの地のお酒をチョイス。新潟、宮城、富山、広島と名だたる酒処からパン研女子の直感で選んだ6本です。

まずは、それぞれのお酒の精米歩合や日本酒度、酸度などの情報をチェック!

ほほう、ふむふむ、なるほどね、はいはい、としたり顔で頷いてみたものの...

うーん飲んでみないとわかんないよ〜。

てわけで、試飲。

ひや、常温、ぬる燗、熱燗とお酒の個性にあわせて。

こうして日本酒を飲み比べてみるとずいぶん個性が違います。これも発酵の神秘ってやつかしら。

イギリスパンを食べくらべたときもお店や会社によってずいぶん味が違っていたからなあ。でもイギリスパンの好みはあれだけ一致したパン研メンバーも、日本酒だと見事にバラバラになるのだからおもしろいものです。

さて本題。

この日本酒にあうイギリスパンの部位はどこかしら???

イギリスパンを横目にチラチラみながら、まずは日本酒の香りを確かめて、僅かに口にふくみ、お口の中で転がして、ごくり。お酒の余韻が残るうちにイギリスパンに手を伸ばす。

あれ?イギリスパンってふつうに日本酒にあうよ。ぜんぜんいける。

お酒を燗にすると風味が丸くなるところなんて、イギリスパンとトーストの関係にも似てるかも。そんなことも思いながら、お酒別にイギリスパンのどの部位が適しているのか検討を重ねます。


たとえば、日本酒度10という超辛口な純米酒の場合。男気あふれるガツンと頑固な酒(パン研女子の個人的な感想です)だからイギリスパンの"もも"(④)じゃ酒に負けちまう、ここは皮厚でワイルドな"ぼんじり"(⑤)にご登場願おう。というわけでイギリスパンの底をつかってパンプディング風のおつまみを何か。

一方、こちらの純米吟醸は、美人女将を思わせるようなパン研女子の個人的な感想です)やさしい辛口、ぬる燗にすると甘いバナナのような香りが立ち上る。ここはもっとも香りのよいイギリスパンの"モモ"(④)を使って割烹的なだし系料理のサンドイッチを。

そんな風にして6種類の日本酒ごとにあわせる部位とメニューの方向性を検討していきました。コンセプトが固まったら、お料理はいつもお力を借りているフードプランナーのお姉さまにお願いしてつくってもらうことに。

そして試作&試食&試飲。




パン研メンバーによる試食&フィードバックをかさねてようやく完成!

ちなみに、毎月パンの楽しみ方を紹介しているメニューもこんな風にしてつくってるんですよ。

さあ、完成した6品をご覧に入れましょう!

◎ハニーナッツとわさびパルミジャーノディップ(使用部位:③)


淡麗旨口系のひやと。つまみはカリカリ、お酒はスルスル。意外な組み合わせほどクセになる好例。

→つくり方

◎ジンジャーピクルスクリームチーズ(使用部位:①②)


イギリスパンのカシラの風味をいかして新生姜のピクルスとあわせてみた。上品で旨みのある辛口と。

→つくり方

◎洋ナシを包んだ日本酒サバラン(使用部位:②)


研ぎ澄まされた大吟醸そのものに浸したサバラン。引きのあるイギリスパンだからお酒をしっかり受け止める。

→つくり方

◎カニの卵蒸しロール(使用部位:④)

かに卵蒸しを巻くイギリスパンも蒸してある。奇跡の口どけ、ぬる燗の芳醇な香りをふわりとまとう。

→つくり方

◎トーストカナッペ(海老の抹茶蒸し(使用部位:④)

海老とトーストと酒、一見難しい三者を抹茶がつなぐ。ふくよかな旨みのやさしいお酒を常温で。

→つくり方

◎味噌と甘酒のチーズプディング(使用部位:⑤)


男気あふれる酒には、イギリスパンのぼんじり、チーズ、味噌を。強いものほどやさしくなれる。

→つくり方

今回つくった日本酒のアテは、こちらでレシピをご紹介しています。ご主人やお父様にふるまってみては?男性のみなさんもリトルマーメイドのイギリスパンをもっともっと好きになってくれるはずです♡

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